先端研究プロジェクト

先端強磁場環境を活用した物質・食品の機能性強化に関する研究

西日本最大級の材料科学研究用強磁場環境
西日本最大級の材料科学研究用強磁場環境

メンバーの紹介

Q1. プロジェクトメンバーをご紹介ください

氏名小山 佳一
所属理工学研究科・理学系
職名教授
学位博士(学術)
URLhttps://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100005417_ja.html
小山 佳一教授
小山 佳一
氏名三井 好古
所属理工学研究科・理学系
職名准教授
学位博士(工学)
URLhttps://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100005779_ja.html
三井 好古准教授
三井 好古

研究・開発のきっかけ・背景

Q2. この研究を始めたきっかけを教えてください

きっかけは東北大学の強磁場センターにいた頃に遡ります。強い磁場を使った物質の変化を研究していました。通常は合金を作る際、複数の金属を熱エネルギーで溶かして新たな合金を作るのですが、強い磁場をエネルギーとして使えば、もっと新しいことができるのではないかと考え、研究を始めました。当時、熱エネルギーや力学的エネルギーと比べると、磁気エネルギーはあまり注目されていなかったのです。
その後鹿児島大学に移り、原料に強磁場を与えることで通常とは異なる合金磁石が合成できることを発見しました。現在は、この大学内に西日本随一の強磁場研究施設が整備されています。

代表者らが開発した強磁場用急冷装置(東北大施設利用)世界最高磁場中凝固
代表者らが開発した強磁場用急冷装置(東北大施設利用)世界最高磁場中凝固

研究概要

Q3. この研究の概要を教えてください

主な研究は2つあります。研究1は、「強磁場を活用した化学反応制御による機能性強化」です。熱だけで化学反応を起こすのとは異なり、強磁場を利用すると今までに無いような新しい現象が起き、様々な化学反応の制御や新規機能性化合物創成に活用できるのではないかと仮説を立てて、研究を行っています。研究2は、「強磁場を活用したバイオ・生体材料の機能性強化」で、菌などの微生物に対する磁場の影響を調べています。こちらに関しては、鹿児島大学農学部焼酎・発酵学教育研究センターとの共同研究で進めています。

「強磁場を活用した化学反応制御による機能性強化」研究の概略
「強磁場を活用した化学反応制御による機能性強化」研究の概略

これまでの成果

Q4. これまで明らかになってきた成果をご紹介ください

研究1の成果は、強力な合金磁石の新しい製法です。普通に溶かしていたら磁石にならない合金が生まれていたのですが、そこに強い磁場をかけると異なる構造に変化し、それ自身が強い磁石になることが分かりました。こちらは特許を出願して既に認められています。
研究2の成果は、酒類酵母に対する強磁場実験で判明したことです。発酵する際、特定の酵母が増えると澱や渋みの成分ができるため、これまでは添加物で汚染酵母の増殖を防いでいました。そこでその代わりに強い磁場をかけたところ、汚染酵母の活動を抑えることができました。

「強磁場を活用したバイオ・生体材料の機能性強化」の最近の成果
「強磁場を活用したバイオ・生体材料の機能性強化」の最近の成果

研究成果の活用・企業等への
アピール

Q5. 得られた結果は今後社会でどのように活用されることを期待しているでしょうか

研究1に関しては、これまで作りにくかった磁石材料も磁場をかけることによって、より効率的に大量に作れると考えています。強い磁石は高温に非常に弱く、急激に磁力が落ちますが、高温でも安定した磁石を合成するための研究を進めています。研究2に関しては、生体の管理は温度や湿度の細かなコントロールが必要ですが、その代わりに磁場をかける方法ならば非接触で影響を与えることができるので、クリーンな状態で制御することができると考えます。

今後の展望・メッセージ

Q6. 今後の研究の方向性を教えてください

今後、超伝導磁石が大量生産され安価になることで、多くの分野で磁気エネルギー活用のイノベーションが起こるでしょう。今のうちに研究を進め、世界に先駆けて磁場の新しい価値を創造したいと考えています。また、西日本一の強磁場研究環境を提供できるので、食品会社などと共同研究し、新たな価値のある商品開発に貢献したいと考えています。

西日本位置の強磁場研究環境をもとにした新たな価値のある商品開発へ展開
西日本一の強磁場研究環境をもとにした新たな価値のある商品開発へ展開