拡張現実性を活用したリハビリテーションとスポーツパフォーマンス向上のための融合研究

メンバーの紹介
Q1. プロジェクトメンバーをご紹介ください
氏名 | 塗木 淳夫 |
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所属 | 共通教育センター |
職名 | 教授 |
学位 | 博士(工学) |
URL | https://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100005026_ja.html |

研究・開発のきっかけ・背景
Q2. この研究を始めたきっかけを教えてください
拡張型現実性技術(XR:Extended reality)とは、拡張現実(AR)、バーチャルリアリティ(VR)、ミックスドリアリティ(MR)の技術全般を指します。私がVRの研究を始めたのは約13年前、イギリスでの研究がきっかけです。コンピューターの画面上、つまりVR空間上で物体を触った際に触覚をフィードバックする装置、「触力覚デバイス」から始めました。このシステムは物体の形や硬さ、重さを自由に変えることが可能です。この技術を活用し、「人は物体の外見から握る力を予測する」という研究を行いました。また、頭部への磁気刺激を通じて脳の活動を解析し、人間が物体を見て握る力をどのように予測するかを詳しく調査しました。これがVRの研究を始めたきっかけです。さらに、このXR技術を活用してスポーツパフォーマンスの向上やリハビリテーションの効果を高める研究を進めようと考えました。
研究概要
Q3. この研究の概要を教えてください
生体工学、医学、スポーツ科学の分野における専門知識を活用し、XRをリハビリテーションとスポーツトレーニングへ応用することを目指しています。
XR技術を利用したリハビリテーションでは、患者が仮想世界で様々な物理的課題に挑戦することで、身体機能の改善に寄与する可能性を研究しています。
また、触覚フィードバックを車椅子バスケットに活用し、より現実に近い感覚で練習できるような研究も始めました。さらに、私たちの先行研究では、サッカー選手の俯瞰的な視点への変換能力を調査し、その応用可能性を検討しました。この結果に基づき、俯瞰的視点を計測し、その能力を高めるトレーニングを提案しています。VRを活用することで、選手がピッチ上と俯瞰上の視点を切り替え、ポジショニング能力を向上させることが可能です。また、、運動追跡技術を用いて選手の動作をデータ化し、分析することで、パフォーマンスの向上だけでなく、リハビリテーションの分野でも回復の度合いを数値化し、評価する技術の展開を目指しています。
これまでの成果
Q4. これまで明らかになってきた成果をご紹介ください
触覚フィードバックが可能なVRシステムを作成し、様々な能力を計測できるようになりました。たとえば、飛んでくるボールをキャッチするシステムにおいて、野球の経験者と未経験者を集め、ボールをキャッチする能力を計測します。ボールのスピードや落下点は変えることができます。当然経験者の方がキャッチできるのですが、実は「ボールが出てくる瞬間に予測している」ことが確認できたことは、成果として出ています。
またサッカーにおいては、「経験者の方が未経験者よりも俯瞰的に見る能力が高い、ポジショニングを良く記憶している」ことを確認できたという成果も出ています。
研究成果の活用・企業等への
アピール
Q5. 得られた結果は今後社会でどのように活用されることを期待しているでしょうか
障害者スポーツやトップアスリートの支援に加え、子どもたちの育成にも貢献したいと考えています。この成果はスポーツパフォーマンスの向上だけでなく、リハビリテーションにも落とし込んでいけると考えています。現在、車椅子バスケットに医学部の先生方が興味を持ってくださっていて、障害者スポーツに移行できないかと研究を始めているところです。
その他にも、車椅子テニス、VRを用いた観察学習のリハビリへの応用、脳のダメージ等によって空間の認知に問題が起こる症状等の研究につなげたいと考えています。