当センターでは,地域の課題解決に向けヒアリングや調査を実施し,研究シーズとのマッチングを行っている。しかし,その中には学内の研究シーズでは対応できない課題や課題自体を明確に示すことができないという課題も存在する。「南九州・南西諸島域ラウンドテーブル」は,このような地域課題に対して,研究者を含む関係者全員で地域課題を理解し,その解決手法を全員で検討することで,地域課題から生まれるイノベーションを発掘することを目的としたイベントである。

■2025年度第1回 喜界島における糖蜜の島内利用法について

【主 催】南九州・南西諸島域イノベーションセンター

【開催日】2025 年 12 月 2 日(火)~ 3 日(水)

【場 所】生和糖業株式会社 会議室

【参加者】生和糖業(株)(2 名),喜界島蒸留所,喜界島酒造(株),農学部教授 髙峯 和則 ,南九州・南西諸島域イノベーションセンター 特任専門員 瀬戸口 眞治

  

【概 要】

 喜界島は,基幹作物であるサトウキビ栽培が島内生産額の 7 割を占めている。このサトウキビのほとんどは生和糖業に納められており,まさにサトウキビ栽培と製糖業で成り立っている島である。
 そのような中,今年の春,製糖工場から排出された糖蜜を輸送する船が故障し,糖蜜貯蔵タンクが満杯となり,一時的に操業を休止せざるを得ない状況が生じた。これは糖蜜の島内処理ができていないことによるものであり,糖蜜の島内処理は喫緊の課題となっている。一方で,喜界蒸留所は,ラム酒を製造しており,近年は生和糖業の糖蜜を原料として利用している。しかしながら,原料の糖蜜の成分が不安定なため,安定発酵ができない状況にあり,その対策が求められている。このような背景から,糖蜜の島内での有効利用法について,喜界島蒸留所及び生和糖業から本学へ協力依頼があった。
 そこで今回は,発酵学の専門家である高峯教授をラウンドテーブルの講師として招聘し,糖蜜利用に関する討論会を開催した。
 検討の結果,ラム酒原料としての利用については,原料となる糖蜜タンクは同一タンクのもののみを利用し,タンク内を撹拌して均質にして使用すること等の注意点を高峯教授より示された。また糖蜜を利用する前にタンク内の糖蜜の成分変化を確認しておくことになった。
 今後は,糖蜜の島内利用を促すため,サトウキビ畑への散布も検討する。小規模の栽培試験では生育に良好な結果を得ていることから,継続して適性を調査することになった。さらに農学部の作物関連の教員との連携も検討することになった。

■2025年度第2回 与論島におけるサヤインゲン残渣の飼料利用法について

【主 催】南九州・南西諸島域イノベーションセンター

【開催日】2026 年 2 月 19 日(木)~ 20 日(金)

【場 所】与論町内サヤインゲン圃場,与論町役場会議室

【参加者】きさくファーム,島結ファーム,あまみ農協与論事業本部,県沖永良部事務所農業普及課,与論町産業課,共同獣医学部 教授 大塚 彰,南九州・南西諸島域イノベーションセンター 特任専門員 井立田 剛

【概 要】

 与論町では,園芸農家のうち約 100 戸がサヤインゲンを栽培している。
 サヤインゲンは町内農業生産額においても園芸品目の最上位となっており,農地面積の小さい町の重要な高収益作物として重点品目となっている。
 サヤインゲンは,通常2回に分けて植え付けして栽培するが,1回目の収穫後に発生する残渣をそのまま圃場に放置すると,そこに残っている果実にセグロウリミバエが産卵し,孵化した幼虫による食害発生の温床となってしまうことが懸念されている。これまでは圃場において残渣を枯らした後,畑にすき込んだり,畜産農家に餌として利用されてきたが,大量に発生する残渣をそのまま家畜に提供すると栄養過多が心配されるため,しばらくは牛舎において保管し,少しずつ給餌しなければならない。よってセグロウリミバエの寄生を防除しつつ,残渣の有効活用を図ることが求められている。また飼料として利用する場合,残渣の成分分析や乾燥処理が必要であり,本学への協力依頼があった。
 そこで大塚教授が与論町を訪問し,町内サヤインゲン農家圃場や肥育農家等を視察し,その後,関係者と意見交換を行なった結果,2026 年度より与論町と共同研究を実施することになった。

■2024年 奄美大島における黒糖焼酎粕の利活用について

【主 催】南九州・南西諸島域イノベーションセンター

【開催日】2025 年 2 月 20 日(木)~ 21 日(金)

【場 所】奄美群島大島紬会館会議室 ,㈱奄美大島開運酒造 ,( 有)富田酒造場

【参加者】鹿児島県酒造組合奄美支部,㈱奄美大島開運酒造(2 名),町田酒造㈱(2 名),西平酒造㈱,奄美大島酒造㈱,(有)山田酒造(6 名 ),農学部 教授 藤田 清貴 ,南九州・南西諸島域イノベーションセンター 特任専門員 瀬戸口 眞治

【概 要】

 奄美群島では黒糖焼酎が製造されており,その製造過程で発生する黒糖焼酎粕は,基本的に特殊肥料として畑への散布が行われている。農業の盛んな徳之島や沖永良部では農業利用が進んでいるが,黒糖焼酎粕の発生量が最も多い奄美大島では,散布できる畑地が少なく,黒糖焼酎粕の処理に窮している状況である。これまでも黒糖焼酎粕の処理法についてはいくつか提案され,設置した装置もあるが,ランニングコストが高いなどの理由から稼働されていない。今後,実用的な処理法や有効利用法の開発が急務となっている。このような背景から,実用的な黒糖焼酎粕の処理方法の取組について鹿児島県酒造組合奄美支部から本学へ協力依頼があった。

 そこで地元焼酎メーカーと本学研究者が直接意見交換し,共同研究の可能性を探ることを目的に,「南九州・南西諸島域ラウンドテーブル」を奄美市で開催した。講師はサトウキビ由来のメラノイジン(抗酸化成分)の有効利用について取り組んでいる農学部 藤田清貴 教授を招聘した。

 当日は,藤田教授が「黒糖焼酎粕の健康食品としての可能性」についてを講演し,その後,黒糖焼酎粕の発生状況,現状の処理方法,これまでの取組などについて情報を共有し,黒糖焼酎粕の処理法や有効活用について議論した。その結果,有効活用については藤田教授と食材化を検討していくこととし,実用的な処理法については,工学部の教員等,適切な研究者を模索することになった。