徳之島におけるサトウキビ農業のIoT化によるスマート農業プロジェクト

写真|徳之島のサトウキビ畑(スマート農業実証フィールド)

-データ閲覧拠点として徳之島3町に「IoT先端農業実証ラボ」を整備 -

1.事業の概要

本事業は、産学・地域連携機能を強化し、学内の研究シーズ情報の一元化と学外機関等とのネットワークの拡充等を図ることにより、南九州・南西諸島域における地域課題の発掘・収集・集約を行うとともに、その中から研究テーマ化やプロジェクト構築を図ることを目的としています。

その中でも学内外に整備する「オープン実証ラボ(研究成果の発表・可視化スペース)」は、その推進によって地域企業の研究開発支援を行い、さらには技術移転支援のほか、公的補助金の獲得やビジネスプランの策定支援等を通じた本学の研究成果の社会実装(事業化)への展開を目指してます。

2.徳之島実証フィールドにおけるサトウキビ産業高度化プロジェクト

(1)背景

徳之島は、奄美群島で2番目の大きさで、奄美大島の3分の1の面積をもち、その一方で耕地面積は奄美群島中最大で6,890haを有し、総面積の約28%を農地が占めます。一戸当たりの耕地面積は2.5haと全国平均値(1.8ha)と比較的して大きく、温暖な気候や広大な農地に恵まれ、サトウキビ、肉用牛、バレイショ、花き、果樹等を組み合わせた農業が営まれています。人口の約26%が農業従事者であり、農業は島の基幹産業となっており、その中でもサトウキビは、栽培面積約3,500ha、生産量約19万トン/年で島の基幹作物となっています。
現在、サトウキビの刈取り作業は機械化が進み、ハーベスターによる収穫率が97%を超えて効率的に行われるようになってきましたが、農業就業人口に占める65歳以上就業者の比率が約60%と高齢化が進んでおり、若年層の島外流出という社会環境下にあって農家戸数は年々減少傾向にあります。あわせて高齢などで離農した農家や島外へ転出した不在地主による農作業の外部委託や農地貸出は、管理不足を招き、単収の低下といった問題を引き起こしています。

(2)課題

現在、徳之島では以下のような課題があります。

  • 収穫量を予測したいが、人手不足等により全島的な正確なデータがつかめない。
  • 製糖工場生産管理のため、作付面積、作付状況の正確な把握が可能な衛星画像データを取得したい。
  • 単収増加のための糖度分布把握による刈取適地の判別がしたい。
  • 製糖工場の計画的な操業のための全島的な生育状況、収穫状況のリアルタイム把握がしたい。
  • 畑地灌漑水(畑地灌漑施設の整備率30%)利用促進のための効果の検証と啓発がしたい。
  • 台風後の散水の時期・量を明確にするためのキビ葉に付着した塩分濃度分布の把握ができないか。

(3)事業内容

2019年2月、徳之島3町のサトウキビ圃場に気象観測用フィールドサーバー(図1)を設置し,微気象観測データおよび生育環境データの収集を開始しました。また2018年4月よりリモートセンシング(人工衛星画像解析)(図2,3)による生育状況データの収集を開始しました。これにより徳之島全島的育成状況把握手法の開発の整備が整いました。

図1 気象観測用フィールドサーバー(左,徳之島町;中央,天城町;右,伊仙町)

図2 人工衛星画像解析例(NDVI画像・広域)

図3 人工衛星画像解析例(NDVI画像(フィールドサーバー周辺))

図4 気象観測結果例(下段に圃場静止画像が表示されている)

上記の人工衛星によるリモートセンシングデータ,フィールドサーバーによる気象観測データおよび圃場画像データ(図4)は,町農政担当者およびサトウキビ生産関係者(生産者,製糖工場)に提供するために,島内の3役場内に「IoT先端農業実証ラボ」と位置付けたパソコンを設置した(図5)。これらデータは,役場,生産関係者が自由に閲覧でき,各役場における農政政策全般に活用されることが期待される。また製糖工場でもデータを閲覧できるようにし,サトウキビの生育状況・生産管理の把握,工場の効率・計画的な稼働のために利用されることが期待される。

図5 徳之島内の3役場内に設置された「IoT先端農業実証ラボ」(左;徳之島町,中央;天城町,右;伊仙町)

(4)今後の展望
島内の圃場毎のサトウキビの糖度がリモートセンシングで状況把握ができると農業者にとっても工場側にとってもメリットが高くなる。2019年度は集落単位の糖度データを入手したが,糖度についての解析まではできなかった。NDVIと日射量との関係を含めて,さらに糖度の把握・判別が出来るように解析技術の向上を図りたい。

 

 

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