研究代表者

農学部 講師 香西直子

地域課題および目的

姶良郡湧水町では、アーモンドの特産化が期待されているが、同町の栽培圃場ではアミグダリン含量が比較的高い系統が混在している。一般に、アミグダリン量はアルコール漬けや粉砕など、積極的な加工によって低減することが知られている。そこで本研究では、保蔵や加工によってアミグダリン含量を低減させる方法を検討する。

研究の概要

湧水町および鹿児島大学(唐湊果樹園)で今夏に収穫される果実を供試する。収穫後の保蔵方法(冷凍、乾燥など)や、種々の形状への加工(スライス状、パウダー状など)、利用方法(はちみつ漬け、焼酎漬け、ローストなど)を試し、仁に含まれるアミグダリン量の変化をHPLCによって分析する。

期待される成果

昨年度の成果では、生育環境の違いがアミグダリン量に影響を及ぼす可能性を示し、また、湧水町や鹿児島大学で栽培されるアーモンドにはアミグダリン量が比較的高い系統が混在していることや、1週間程度の乾燥ではホール状の仁におけるアミグダリン量は大きく低減しないことを明らかにした。そこで本年度は、種々の栽培方法や加工方法を試み、特に収穫後の管理によるアミグダリン量の低減方法を提案する。さらに昨年度の調査では、可食部である仁が十分に肥大していない果実が多く見られたことから、仁をホール状で出荷することは困難であると思われた。スライス状やパウダー状にするなど、積極的な加工によってアミグダリン量を低減することが可能であれば、収穫物を最大限に利用することができ、新たな需要を発掘する好機にもなる。本研究により、アーモンドが姶良郡湧水町の新しい特産品として定着するものと期待できる。

2020年度の研究成果

唐湊果樹園で栽培されているアーモンド(品種名不明)8樹を供試して、異なる加工方法(実験1)および異なる保存方法(実験2)が仁のアミグダリン含量に及ぼす影響を調査した。実験1では、仁を取り出し、ロースト(180℃、10分)処理後、アルコール(30%/60%/99%、4週間)保存後、および処理前の仁からアミグダリンを抽出した。実験2では内果皮(殻つき)の状態で25℃、5℃、-20℃の各温度条件下で4週間保蔵した後、仁を取り出しアミグダリンを抽出した。処理前の仁を対象とした。抽出液はHPLC分析に供試した。また、果実数の制限から実験は行っていないが、殻付き種子のブランデー漬けと仁のはちみつ漬けを作成し、アミグダリン量の分析を試みた。実験2のサンプルを分析したところ、いずれも海外で報告されている生食用品種の範囲内であることが分かった。処理区間でもアミグダリン含量に一定の傾向はみられていない。実験1と、ブランデー漬けおよびはちみつ漬けについては、HPLCの動作不良により現時点(3月下旬)で分析が完了していない。

県内で栽培可能なアーモンドに含まれるアミグダリン量は生食用の範囲にあると思われるが、粒形が不ぞろいで市販品に比べて外観は劣る。今後、スライス状やダイス状に加工した際にどの程度の品質が維持できるかを明らかにする必要がある。また、品質を左右する油分の分析も行う必要がある。

表1 種々の温度条件下で4週間保蔵した仁のアミグダリン量

今後の展開

県内におけるアーモンドの特産化に対する期待は大きい。しかしながらアーモンドのようなナッツ類は加工が前提であり、製菓用等の加工向けに出荷するには一定量を生産する必要がある。今後、優良系統(品種)の選抜や、栽培技術の開発も進めて、安定した品質の果実(仁)を生産する必要がある。また、湧水町とも引き続き連携し、飲食業や菓子製造業者とも意見交換をおこない、加工業者の要望も把握する必要がある。

 

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