メンバー

理工学域工学系 教授・甲斐敬美(代表者 )

理工学域工学系 教授・二井晋

地域課題および目的

現在、コストをかけて廃棄される廃材バイオマスが存在する。これらを有効に利用することで逆にエネルギーを取り出すことも可能である。このようなバイオマスをエネルギー資源とするためには何らかの化学プロセスが必要となる。本プロジェクトでは以下のテーマについて取り組む。

① 南九州地域において利用可能なバイオマスから水素を発生させるための具体的なプロセスの検討を行う。

② 装置設計のために必要な基礎データを得る。

研究の概要

木材の炭化によって得られた炭をさらに水蒸気と反応させて水素と一酸化炭素を得る反応がある。この反応は改質反応と呼ばれるが、小規模で効率よく反応を行うためのプロセスは存在しない。昨年度の検討で、この反応を効率よく行うための装置として流動層反応器が候補になった。今年度は流動層反応器を設計するための基礎データを得る。具体的には固定層において反応速度の解析を行う。

期待される成果

廃材から水素を経済的に得ることができるプロセスが構築できると、さらに燃料電池への利用などが考えられる。廃材は都市部でも地方でも排出されており、南九州に限らず国内どこでも有効利用できると考えられる。

2020年度の研究成果

バイオマスをエネルギー源として利用する方法として、含水率を低下させて燃焼によって熱としてエネルギーを取り出すことは古くから行われている。ただし、基本的に固体であるためハンドリングが面倒であることや、既存のエネルギー利用システムにそのまま適用できない欠点がある。それを解決するために、まず流体化することが考えられる。水素やメタンなどの気体燃料やガソリンや軽油などの代替ができる液体燃料への変換が相当する。

間伐材や剪定枝などの木材を高温で炭化することによって得られた炭をさらに水蒸気と反応させて水素と一酸化炭素を得ることができる。得られるガスは合成ガスともよばれ、化学合成の原料になるが、さらに一酸化炭素と水蒸気を触媒存在下で反応させると水素が得られる。これらの反応を組み合わせれば、水素を高い転化率で得ることができる。水素は燃料電池の燃料としての利用が考えられる。

ところで、炭を改質する反応を小規模で効率よく反応を行うためのプロセスは存在しない。本研究会においては、固体の連続供給が可能であることや高い伝熱特性を持っていることから流動層反応器が適していると判断している。反応器を設計するにあたっては、適切なモデルとそこで利用するパラメータが必要となる。重要なパラメータとしては、反応速度と活性化エネルギーであるが、見かけの反応速度が真の反応速度になるのか、物質移動の影響があるのかについて検討する必要がある。本年度はこれらのパラメータを得るためのラボ規模の反応装置を組み立てた。また、予備的な実験を行い、いくつかの不具合を調整しながら、実験装置と方法について確立することができた。

今後の展開

ラボ規模の反応装置を使って、必要なパラメータである反応速度と活性化エネルギーの測定を行う。また、本反応に適用できる反応器モデルを構築し、実機における操作条件を与えて、どのような規模の装置でどのような成績が得られるかシミュレーションを実施していく。これらの結果を装置設計のための基礎資料として提供する。

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