希望と感謝(退任のご挨拶)/産学・地域共創センター長 前田広人

私は戦後10年も経っていない時期に生まれました。みんなが等しく貧しかった世代ではありましたが、今から思うと、豊かではないときに子供時代を過ごしたことは逆に希望に満ちた世代でもありました。その象徴が小学4年生の時の東京オリンピックでした。日本はあの時以来、高度成長期に突入し、未曾有の発展を遂げてきました。前向きに努力すれば実が結ぶ、そういう時代でした。その後、停滞期はありましたが、二度目の東京オリンピックを迎えるにあたって、更なる飛躍をみんなが待ち望んでいます。

私の研究生活は、鹿児島から京都へさらに琵琶湖に行き、いったん鹿児島に帰って参りました。そしてまた鹿児島から三重へ行き再び鹿児島に帰って来たわけです。魚に例えるなら、海から湖へ、そして黒潮にのって紀伊までを行き来する、いわゆる回遊魚の人生を送ってきました。退任にあたり、今後の現役世代に希望することと、これまでお世話になった方々に感謝の気持ちを述べさせていただきます。

「進取の気風」の旗印のもと、本学が推進している第Ⅲ期の中期目標・中期計画を継承することは「確固たる地域圏大学の確立」にとって必須であり、これを尊重して実行することが重要です。その布石の一つに南九州・南西諸島域共創機構が設置され、その中核に産学・地域共創センターが置かれました。開設して2年経ちました。いまだ模索の繰り返しでありますが、このセンターの夢に満ちたやりがいのある仕事に対して、スタッフ一同は意義を感じ、意欲的に取り組んでいます。私たちが敷こうとしているレールは、スタートして間もないこともあり、途上にありという感じではありますが、成果を実らせるために邁進している次第です。

最初の2年間は、研究スタッフおよび研究施設の補強、各スタッフ間のチームワークの強化、広範囲の業務を少人数で効率よく処理するための体制づくりなど、補完すべき創設期特有の懸案に取り組んできました。そして、将来を見据えてセンター存立の意義に対して共鳴してくださる内外の方々、スタッフ各位の努力に支えられ、手応えを感じる今日この頃であることも確かです。今後は、人的交流、ネットワーク基盤作りを進めるとともに、これまで大学が地域と連携してきた経験の長所と短所を検討し、大学関係者以外にも理解されやすく、そして多くのひとびとに平易にアクセスされる研究施設をめざしております。

退任に当たり、更なる関係各位の益々のご支援をお願いする次第です。これまで当センターにご協力をいただいた各位に厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。

令和2年3月31日

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