メンバー

農学部 教授・津田 勝男(代表者)

農学部 准教授・坂巻 祥孝

地域課題および目的

〜本プロジェクトでは以下の2つのテーマについて取り組む。

1.天敵糸状菌製剤施用によるゴマダラカミキリの防除効果の評価をおこなう。

2.殺虫剤の局所施用によるゴマダラカミキリの防除効果の評価をおこなう。

研究の概要

喜界島では、カンキツの害虫であるゴマダラカミキリを生物的に防除するために2015年から2019年までの5年間に渡って天敵糸状菌製剤(バイオリサ・スリム)を喜界島全島のカンキツ樹4万8千本に施用する取組みを実施し、カミキリムシの数は劇的に減少した。ただし、絶滅には至っていないため、2020年度からはカミキリ成虫の買い上げ強化と殺虫剤の局所施用により防除の徹底を目指す方針である。5年間の取組みが終了した時点でのカミキリムシの生息状況を把握して、天敵糸状菌製剤の施用停止の影響および成虫買取りの効果を評価する必要がある。また、発生が継続している地域においては殺虫剤の濃厚液の樹幹散布による根部へ食入したゴマダラカミキリ幼虫の防除効果を確認する。

期待される成果

ゴマダラカミキリの防除については、天敵糸状菌製剤の5年間に渡る全島施用を停止したことの影響を知ることによって、天敵糸状菌製剤の再施用の必要の有無を検討することが出来る。また、殺虫剤の局所施用効果を確認することによりカミキリ被害が継続している地域における被害防止をはかる。

ゴマダラカミキリの被害を抑制することにより、「ケラジ」や「クリハー」などの特産カンキツの栽培機運の高まりが期待される。

2020年度の成果

喜界島ではゴマダラカミキリの防除について、2015年から2020年までは天敵糸状菌製剤を用いて全島一斉防除を行ってきた。その結果、定点調査を行った5地区のうち4地区ではゴマダラカミキリの発生は激減した。一方、志戸桶地区では発生が継続していた。そこで、2020年度は、成虫買取価格の値上げによる住民への啓発と化学農薬による幼虫防除を併用してカミキリ被害の軽減をはかった。

表に示したように大朝戸・西目・荒木・花良治地区の定点圃場(12圃場)での成虫の羽化・幼虫の発生はほとんどゼロに近く、発生は終息したと考えられる。発生が継続している志戸桶地区(5圃場)では幼虫食入数が劇減した。これは化学殺虫剤散布の結果と考えられる。

一方、成虫の買取数は約4700頭で前年の2846頭から大きく増加した。このうち志戸桶を含む北部地域の買取数は2400頭あまりで半数以上を占めている。これは買取り価格を50円から100円に値上げした効果と志戸桶を含む地域の発生が継続していることによると考えられる。化学殺虫剤散布の効果は今年度(2020年度)の成虫買取数には反映されない。

今後の展開

化学殺虫剤散布による幼虫の防除効果は認められたが、住民の中には化学殺虫剤を使用することへの抵抗感が大きい。このため、喜界町では成虫買取価格を200円に値上げして成虫防除を徹底することにしている。鹿児島大学はこの効果を実証するとともに幼虫の捕殺による防除効果を検討する。今年度は幼虫捕殺に好適な時期に現地に赴くことが出来なかったため、次年度にあらためて効果を実証したい。

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