研究代表者

農学部 准教授 寺本行芳

地域課題および目的

1.令和2年豪雨による熊本災害の実態を明らかにする

2.1の成果から得られる教訓を、鹿児島県の防災に活かす。

研究の概要

令和2年7月豪雨によって、全国各地で斜面崩壊、地すべり、土石流に伴う土砂災害が多発し、熊本県をはじめとする九州を中心に甚大な人的被害や人家被害が発生した。また、被害は、河川の氾濫による浸水、交通、上下水道、通信、医療など広範囲に及んだ。
本調査研究は、令和2年7月豪雨による熊本災害の実態解明のために実施するものである。災害は広範囲に及んだため、以下の通り、研究会のメンバーで役割分担した。土砂災害の実態解明(寺本)、道路被害の実態解明(酒匂)、河川災害の実態解明(齋田)、豪雨の実態解明(伊藤)、避難所の実態把握(岩船)。さらに、実態解明によって得られた教訓を、鹿児島県における防災減災対策、防災教育、防災啓発などに活かす。なお、令和3年2月頃に研究成果報告会を開催予定である。

期待される成果

令和2年7月豪雨による熊本災害の実態解明に関する調査研究によって得られた成果は、毎年のように豪雨に伴う災害が発生し、多くの被害が起こっている鹿児島県における防災減災対策、防災教育、防災啓発に貢献できると考えられる。

2020年度の研究成果

本研究会の目的は、令和2年7月豪雨による熊本災害の実態解明と得られた教訓を鹿児島県の防災・減災に活かすことである。中間報告以降の成果は以下の通りである。

【研究成果報告会のオンライン開催(2021年3月16日13:30〜15:30)】

本学の教職員と学生、鹿児島地方気象台、垂水市、霧島市など学外の防災業務担当者を含め、43名の参加があった。研究会構成員の報告の概要は以下の通りである。

伊藤は、令和2年7月豪雨時のスネーク曲線と平成30年7月豪雨時のスネーク曲線を比較することで、令和2年7月豪雨は短期的な降雨強度だけでなく長期的な降雨量に関しても非常に強い雨が降っていたことを報告した。

寺本は、熊本県芦北町伏木氏の土砂災害をもたらした斜面崩壊は、厚く発達した強風化層中に、記録的な豪雨に伴う多量の雨水が浸透したことにより発生したことなどを報告した。

酒匂は、熊本県南部の国道219号沿いの道路、堤防、橋梁の被害状況について仮復旧状況について報告した。また、鹿児島県大隅半島の国道269号被害や宮崎県西米良の国道219号の被害とも比較し、今回の道路被害のメカニズムについて取りまとめた。

齋田は、鹿屋市新川町地区における内水氾濫について、強い降雨がその主要因であることを報告した。また、内水路の溢水に対する斜面崩壊に伴う土砂流入の影響についても検討した。

岩船は、予防的避難できない時の緊急避難経路の有無が、球磨村での犠牲者発生要因として重要なことを指摘した。地形環境的に逃げ道がない球磨川本流地区で集落を維持するには、要配慮者も移動可能な垂直避難施設建設を含めた緊急避難計画が必要である。

 

成果報告会の様子

今後の展開

調査結果やそれから得られる教訓を整理し、学生・地域住民・自治体防災業務担当者を対象とした防災関連の講演会などによる防災啓発を通して地域防災力の向上に役立てる予定である。

 

 

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