研究代表者

鹿児島大学農学部 講師 加治屋勝子

地域課題および目的

①鹿児島の伝統野菜である「桜島大根」は,生産農家の高齢化により生産戸数の減少が懸念されている。
そこで,桜島大根の健康増進機能を付加価値として販路拡大を目指す。
②十数年前から姿を消しつつある「国分大根」を消滅の危機から守り,地域の特産物として復活させる
ため,優良系統の選抜や健康増進機能の評価を行う。

研究の概要

桜島大根の栽培面積は,最盛期の明治時代には200ha であったが,1988 年には1.5ha まで減少した。
その後,徐々に増加し,昨今は7-10ha である。生産量を増やせない原因としては,販売先の新規開拓
が難しいこと,漬物加工用が主であるが近年の漬物離れにより消費が低迷していること,生産農家の高
齢化などが挙げられる。代表研究者( 加治屋) らは,これまでに桜島大根の血管機能改善作用を解明し
ており,根だけではなく葉にも機能性成分が含まれていることを明らかにした。そこで,企業担当者( 山
田) らを中心に,これまで利用されなかった葉を使用した新規商品の開発を行う。また,この機能性が
桜島大根だけのものなのか,桜島大根の起源と言われている国分大根にもあるのかはっきりしていない。
そこで,担当研究者( 吉田) らを中心に,桜島大根に関わる遺伝系統樹を作成し,桜島大根の遺伝的近
縁種を確定する。また,加治屋らを中心に関連する各種大根の機能性成分の定量を行う。伝統野菜の優
良系統の選抜は,担当研究者( 中野) らを中心におこない,国分大根の栽培は企業担当者( 久木田) が行う。

2018年度成果

血管機能を改善する食材を探索し,約300 種類の農産物の中から桜島大根を探し当てた。さらに,桜
島大根の血管機能改善作用を示す機能性成分トリゴネリンを特定し,作用メカニズムを分子レベルで解
明した。また,「桜島大根摂取による血管機能改善作用に関する臨床試験」のトライアルを実施した結果,
桜島大根の摂取により,血管機能が改善していることが証明された。

2019年度成果

国分中央高校の生徒と共に本格的に国分大根継承の取り組みを開始。また農業青年団体「飛翔クラブ」
とも連携している。霧島市内の小中学校給食の食材(けんちん汁,大根サラダ)として提供し,地元レ
ストランによる旬のメニュー開発も行われた。国分大根は桜島大根の起源とされる大根の一つで,トリ
ゴネリンを含んでいることも明らかにした。

2020年度成果

鹿児島大学教育学部附属小学校(4 年生) を対象に,桜島大根に関する食育を行った。桜島だいこんフェ
ア(2021/1/30-2/23,図1) を鹿児島商工会議所,鹿児島県,鹿児島市と共に開催し,まずは地元から
桜島大根の美味しさ,生体調節機能について知っていただく機会を提供した。県内企業と連携して,新
商品,新惣菜,新メニューを開発し,販売開始したものもある。学生団体と連携して,農業体験で終わ
らせず,生産から販売までを行う農業コミュニティ創成のサポートを行った(図2)。

発表

【学会等】国際アジア・オセアニア生理学連合大会(2019/3/28-31),アメリカ心臓病学会(2019/11/16-
18),国際フードファクター学会(2019/12/1-5),国際医学・健康科学会議(2019/12/26-29),国内学
会多数発表,シンポジウム多数発表,招待講演多数発表
【報道等】南日本新聞,毎日新聞,朝日新聞,日経新聞,日経MJ,食品経済新聞,全国農業新聞,食
料新聞,文教速報,地域コミュニティ誌「nagomi」,リビングかごしま,各紙に掲載。NHK,KYT,
KTS,KKB,MBC の各社で放送。
【受賞】日本栄養・食糧学会トピックス演題(指導学生),岩崎育英文化財団賞( 指導学生),鹿児島大学
商工会議所会頭賞(指導学生),かぎん文化財団賞,杉田玄白賞奨励賞
【論文】1) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 66, 8714-8721, 2018; 掲載誌の表紙に採用され,
アメリカ化学会より画期的研究トピックス「モンスター大根」として全世界にプレスリリースされた。
2) Nutrients, 12, 1872-1883, 2020; 特集号Phytochemicals and Human Health, Dietary (Poly)Phenols
and Health

今後の展望

担い者育成,協力企業の増加,桜島大根・国分大根を食べる機会の増加。

 

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